30代・年収400万円ならいくら貯蓄があるのがフツー? 「独身者の平均額は822万円」というデータの正しい読み方は?

 

 

「30代で年収400万円なら、いくらぐらいの貯蓄があるのがフツーですか」

 個人相談でよく質問されるのが、「みんなはどうしているんですか?」「平均はいくらぐらいですか?」などの他人のお金について。普段は仲がよい友達とも、自分のお金の話をリアルに話すこともなければ、根掘り葉掘り聞くのも気が引けるからこそ、他人のことが気になるのかもしれませんね。気軽に口にしてしまいがちな「平均額」ですが、平均額を知ることで何が満たされるのか、一度考えてみませんか?

多い? 少ない? 2人以上世帯の平均貯蓄額は1079万円 出典:家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯調査)平成28年

 では、問題です。

1.独身者の平均貯蓄額は、いくらでしょう?
2.2人以上世帯の平均貯蓄額はいくらでしょう?

 家計の金融行動に関する世論調査(平成28年調査結果、金融広報中央委員会)の結果を見ると、答えは次の通りです。

1.独身者の平均貯蓄額は、822万円
2.2人以上世帯の平均貯蓄額は、1078万円

 「平均額」と比べて、あなたの貯蓄額は多いですか? それとも、少ないですか?

 なかには、平均額に驚いた方もいらっしゃると思いますが、実は、平均値よりも、「中央値」のほうが実感に近いといわれています。中央値とは、数字を小さい順に並べた真ん中の人の値のこと。では、具体的に見てみましょう。

 たとえば、ここに5人の人がいて、それぞれの貯蓄額が0万円、50万円、100万円、150万円、2000万円だとします。この場合の平均値は、5人の貯蓄額を合計して5で割りますから、460万円です。でも、平均値460万円となると、5人の誰にとってもかけ離れた数字のように感じませんか?

 中央値は、数字を小さい順に並べた真ん中の人の値ですから、この場合は100万円です。中央値の100万円は、貯蓄額が2000万円の人にとっては少なすぎる数字ですが、残りの4人にとっては実感できる金額に近いのではないでしょうか。

 それでは、先ほどの独身者と2人以上世帯の貯蓄額も、中央値を見てみることにしましょう。すると、独身者は20万円、2人以上世帯は400万円です。平均額と比べてかなり金額が下がったことがお分かり頂けるかと思います。統計データを見るときに、ちょっと知っていると数字のマジックが読み解けます。

 

 

 それではいよいよ、年代・年収別の貯蓄額をご紹介しましょう。

 独身か二人以上の世帯か、当てはまるほうの画像を開いて、自分の年代・年収のところを見つけてみてください。

 たとえば30代、年収400万円、独身の人の平均貯蓄額は504万円、中央値は100万円です。詳しく見ると、金融資産非保有者、つまり貯蓄ゼロ円の人が43.3%いるので、中央値が平均値より下がっていることがわかりますね。

 こういう統計データを見ると、いかにもこれが日本全体の貯蓄を表しているように見えますが、そうとは限りません。なぜなら、調査の対象となった人が少ないと、1人の回答が、さも全体の答えのように見えてしまうからです。

 論より証拠ということで、30代、独身で、年収1000万~1200万円の欄を見てください。平均値も中央値も7600万円の貯蓄がある結果になっています。一番右端の「総数」という欄に2と書いていますが、これは調査人数が2人ということを表しています。つまり、たった2人の回答が、日本全国30代・年収1000万~1200万円の独身者の平均のように見えてしまうのです。

 また、回答者数が少ないと、年によって変動が大きくなります。

 たとえば、独身者で20歳代、年収750万~1000万円を見ると、該当者が1人しかおらず、その人がたまたま金融資産非保有者だったために、平均値・中央値共にゼロ円でした。でも、1年前の統計では、貯蓄額が3800万円の人が1人だけ対象者となっていたため、平均値・中央値共に3800万円という結果だったのです。

 1年違いで0円か3800万円というように平均値がかわることがあるのが、統計データです。統計データは正しくとも、自分の感覚とあまりにも違うと感じたときは、もう一歩進んで、調査方法や調査対象人数などを調べてみると、発見があるかと思います。

 多くの方が気にする「貯蓄の平均額」に話を戻しますが、なぜ平均額が気になるのでしょうか。学生時代のテストなら、平均点を取っていれば安心できたこともあるかもしれませんが、家計は学校のテストとは違い、貯蓄額が平均額より多いから安心ということにはなりませんよね。

 平均額よりたくさん持っていたとしても、旅行に行きたい、車を買いたい、と思ったときにお金がなければ、やりたいことができない可能性があります。その反対に、平均額より少なくても、結婚式のため、資格取得のためなど、目的に応じた貯蓄を貯めることができれば、自分で人生を選択することができます。

 平均データは絶対的なものと思わず、あくまでも「参考」程度にとどめ、自分がやりたいこと、欲しいものに合わせた貯蓄を実践してくださいね。

 

 

日経ウーマンオンライン(日経ウーマン) 1/24(火)