年収1000万vs300万「人生とお金の満足度」1000人調査


年収が高いほど幸福度が高くなることは、様々な研究でわかっている。今回の調査でもその傾向はあった。しかし、300万円父さんの中にも、幸福度70点以上が半数近くいることも判明。一方、1000万円も稼いでいるにもかかわらず、幸福度が70点未満の不機嫌父さんは3割強だった。稼がなくても幸せな人と稼いでも幸せになれない人。両者の違いを徹底分析した。

 【調査概要】「NTTコムリサーチ」の協力を得て、働くお父さんを対象にインターネット調査を実施。年収300万円台358人、700万円台355人、1000万円以上311人が回答。年収300万円台は平均年齢45歳、1000万円台は50歳。調査期間は2014年6月23~25日。

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▼ハッピー父さんの特徴……幸福度【高】年収【低】
[仕事満足度]64点[家庭満足度]85点[育児参加率]72点
・出世競争から降りている
・家族仲が良い
・地域とのつながりが強い
・毎日同じ居酒屋で同じ会話を楽しめる
・将来リスクへの備えがない
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▼不機嫌父さんの特徴……幸福度【低】年収【高】
[仕事満足度]50点[家庭満足度]43点[育児参加率]47点
・大企業のミドルに多い
・多忙で身動きがとれない
・中途半端な知恵がついている
・自己評価は高いが、それに見合った能力がない
・人間関係に疲れている
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年収1000万vs300万「人生とお金の満足度」1000人調査

写真・図版:プレジデントオンライン



■仕事篇:出世競争に勝つか、降りて幸せになるか [仕事満足度]ハッピー父さん 64点 VS 不機嫌父さん 50点

 調査で、年収1000万円以上で幸福度が70点未満だった人を「不機嫌父さん」、年収300万円台でも幸福度が70点以上だった人を「ハッピー父さん」と位置づけた。

 不機嫌父さんは、残業時間が多く、慢性的にお疲れの様子だ。プレッシャーが大きいわりに、評価は自分が思うほど高くない。業績重視の職場はギスギスして、悩みを打ち明ける相手もいない。

 そんなに辛ければ、少し力を抜いてもいいのに、そこは高年収のプライドが許さない。しかも、同じ年収でハッピーな「エリート父さん」ほど突き抜けた能力はない。中途半端な能力に、中途半端な自尊心。大企業で働く人のマジョリティーはこのタイプだ。

 一方、ハッピー父さんはそんな過酷な競争に初めから参加していないから、ストレスは小さい。職場に足の引っ張り合いはなく、そこそこの努力でそこそこの評価を受け、不満はない。まさしく身の丈に合ったビジネスライフだ。

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◆評価に満足している人
→1000万円もらっていても、不機嫌父さんの64%は評価に満足できない。一方、お金の面では報われていないハッピー父さんだが、6割近くが評価を正当と捉えていて対照的だ。

◆「努力は報われる」と思っている人
→「こんなにやってるのに」と不満を募らせる不機嫌父さんの姿が目に浮かぶ。ハッピー父さんは大多数が努力は報われると回答。お金より努力を認めてくれる誰かがいることが重要なのだ。

◆職場に悩みを話せる人がいる人
→競争の世界を生きる不機嫌父さんは周囲に敵だらけ。弱音を吐けば足元をすくわれる。ハッピー父さんは調和が第一。独り勝ちがない代わりに、仲間意識や達成感の共有がある。

◆ストレスやプレッシャーを感じることが多い人
→不機嫌父さんは年収相応の責任ある立場。能力がずば抜けていないとプレッシャーを感じて当然だ。ハッピー父さんも気楽なようで約半数はストレスを感じている。

◆慢性的に疲れている人
→1カ月の残業時間を見ると、不機嫌父さんは「ほとんどない」が3割。ハッピー父さんは「30時間以上」が4割。

◆業務内容に満足している人
→業務に対する満足度が低い不機嫌父さんは2タイプあるだろう。上昇志向が強すぎて常に満足できないタイプ。そして、能力以上の業務を任されて疲弊しきっているタイプだ。
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■お金篇:年収1000万、おこづかい10万円に満足できない人々 [年収満足度]ハッピー父さん 16点 VS 不機嫌父さん 40点

 ハッピー父さんでも、300万円台の年収に満足している人はたった16%。なにしろ自由にできるお金(おこづかい)が少ない。月に3万円未満が73%、うち1万円未満の人が23%もいる。昼食も半分以上がお弁当だ。こうなると節約を楽しむしかない。

 ハッピー父さんの3割以上が実家で親と同居しているのもうなずける。住宅費の負担が小さければ、年収300万円でも暮らしにはまず困らない。親に子どもを預ければ共働きもしやすくなる。

 不機嫌父さんのほうは、1000万円以上ある年収にも満足していない。住居は注文住宅の戸建てが最も多く、生活水準が高い。家の外でも行動範囲が広いから、人づきあいや外食にかけるお金は自然と多くなる。月10万円以上のおこづかいがある人が2割近くある。

 それでも不機嫌なのだから、年収や自由にできるお金と、生活の満足度はほとんど別次元にあることがわかる。

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◆「節約」を楽しめる人
→お金がなければ節約を楽しめばいい。ハッピー父さんは7割以上が節約を楽しんでいる。不機嫌父さんも6割近くが節約を楽しんでいるのは、将来に対する危機意識の表れか。

◆実家率
→ハッピー父さん:1位/実家 32%、2位/賃貸 26.3%、3位/注文住宅 18.7%。不機嫌父さん:1位/注文住宅 26%、2位/建売住宅 20%、3位/郊外マンション 15%

◆1カ月あたりのおこづかいが「3万円未満」の人
→ハッピー父さんのおこづかいは「1万~3万円未満」が50%、「1万円未満」は23%と3万円未満が7割を占める。不機嫌父さんは「3万~5万円」が最多の35%で、10万円以上が2割いる。

◆お弁当持参率
→ハッピー父さんの過半数がお弁当を持参。おこづかいが少ないことが理由の1つだろう。不機嫌父さんが3割に満たないのは、職場環境や働き方の違い、そして家庭の円満度も影響か。
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■家庭篇:人を不幸にする「禁断の果実」とは?  [家庭満足度]ハッピー父さん 85点 VS 不機嫌父さん 43点

 年収で満足度が測れないなら、幸せの源泉は果たして何か。「妻子」の答えが最も多かったのは年収300万円台のハッピー父さんたち。96%――。これはほぼ全員と言っていい。次いで、年収1000万円以上のエリート父さんも「妻子」が94%と高い。

 反対に「妻子」が最も少なかったのは、年収1000万円以上の不機嫌父さん。「週末に1人で出かける人」が39%と4タイプの中で断トツで、どことなく孤独な姿が浮かび上がってくる。

 この対照的な結果には、自由になるお金や行動範囲の広さも多少は影響しているだろう。不機嫌父さんは、おこづかいが多くて行動範囲は広い。職場と家庭に悩みを打ち明ける相手がいなければ、キャバクラへ通って悩みを聞いてもらうこともできる。

 そうなると、家族に話せない秘密ができるのも不思議ではない。妻の愛情を感じられないのも、離婚を考えるのも、家の外に多くの選択肢があるという理由が考えられる。人間には知らないほうが幸せな「禁断の果実」があるようだ。

 ハッピー父さんは地域のつながりや地元も大切にする。その点では、「家族」「絆」「仲間」という言葉を好み、上京志向が低い20代の“マイルド・ヤンキー”とメンタリティーが近い。彼らにとって、広い世界で活躍することや過酷な競争はまったく無意味。

 世代は離れているが、ハッピー父さんも、出世競争にあくせくするより、狭い世界で居心地のいい人間関係に癒やされることを選んでいるのは同じだ。この一致は偶然でなく、働き方や生き方の価値観の変革が起きているのだろう。

 不機嫌父さんがもし自己変革を望むなら、1度競争の世界から降りて年収800万円くらいの仕事を選ぶ手もある。ハッピー父さんのほうも、リストラなどのリスクにも注意したい。両者が互いに歩み寄った中間地点が、最も安定的で満足感の高いポジションになるはずだ。

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◆家族に仕事の悩みを話す人
→ハッピー父さんは、職場だけでなく家庭にも仕事の悩みを話せる相手がいる。一方、不機嫌父さんは職場にも家庭にも仕事の悩みを打ち明ける人はいない。誰に相談しているのだろうか。

◆一番幸せな週末の過ごし方が「家族と過ごす」の人
→ハッピー父さん:1位/家族と過ごす 72%、2位/趣味 21%、3位/1人で出かける 2.9%。不機嫌父さん:1位/家族と過ごす 46%、2位/趣味 32%、3位/1人で出かける 9.0%

◆料理をする人
→ハッピー父さんは半数近くが料理をする。それだけ自宅にいる時間が長く、家庭内で一定の役割を担っていることをうかがわせる。

◆家族には言えない秘密がある人
→4タイプの父さんの中で秘密を持っている人が最も少ないのは300万ハッピー父さんで、36%。1000万不機嫌父さんが最も多い63%。この対照的な結果が、家族のつながりと満足度の深い関係をうかがわせる。

◆ワークライフバランスがとれている人
→不機嫌父さんが残業の連続で慢性的に疲れている一方で、家族と過ごす時間が多いハッピー父さんは、当然ワークライフバランスにも自信があり、8割近くがバランスのとれた生活を送っていると回答した。

◆地域とのつながりがある人・地元に愛着がある人
→ハッピー父さんは、“マイルド・ヤンキー”と同様に、地域のつながりが充実している。対して不機嫌父さんは、地域のつながり、地元への愛着が4タイプの父さんの中で最も少なかった。仕事や稼ぎがそこそこでも、家族やご近所の人間関係が充実していれば幸せが得られるのだ。

◆「妻に愛されている」と感じている人・セックスレス(月1回以下)率
→両者の間でより大きい差が出たのは仕事関連の項目よりも、家族に関する項目だった。なかでも「妻の愛」の差は30ポイント近くに。仕事より妻の愛が幸福度に影響するといえそうだ。

◆育児に積極的にかかわった、かかわっている人
→夫が育児に積極的にかかわることで、妻から感謝され、子どもとの関係が良くなり、家庭満足度が上がるという好循環が見て取れる。育児が大変な時期に父として夫としてどう振る舞うかは、将来の家族関係を大きく左右する。パパは頑張りどきだ。
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博報堂ブランドデザイン若者研究所 原田曜平(はらだ・ようへい)
1977年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。著書に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)など。