コインパーキングで年に1200万円儲ける主婦 勝因は2つの盲点


「不動産投資」といえばアパートやマンション経営を思い浮かべるだろう。だがやりたくても「資金がない」状況から知恵をしぼった主婦がいた。


 著書『コインパーキングで年1200万円儲ける方法』で珍しい不動産投資法を披露しているのが、元全日空CAで幼い子供3人を抱える主婦の上原ちづるさんだ。


 彼女が成功した投資法は、「自分でコインパーキングを運営する」というものだ。投資を始めるきっかけは、1つの「気付き」だった。


「投資を始めた2006年は道路交通法が改正された年で、『駐車違反の取り締まりが厳しくなっている』というニュースをやっていた。周りでも“駐禁を切られた”という人が増えて『じゃあコインパーキングが必要になるんじゃないの?』と思ったのがきっかけです。


 最近は不動産開発が進んで一時的にパーキングとして使われていた土地がビルなどの建物になり、駐車場不足が進んでいるので、さらに追い風になっていると考えています」(上原さん、以下「」内同)


 投資の世界では「転売目的の土地は、地価が上昇するまでは駐車場にしておく」という考えが一般的。しかし、上原さんは「地価上昇局面では、足りなくなる駐車場をつくれば儲かる」と考えた。素人主婦ならではの逆転の発想だ。


 実際に運営するとなると「土地」が必要になる。彼女は始めようとした際に、こんなことに気付いた。

「あるコインパーキング運営会社が月極駐車場を探していることを知ったんです」


 つまり、月極の平置き駐車場を施設ごとまるまる借りて、「又貸し」するビジネスモデルが成り立っているということだ。


「その時に『コインパーキング』って『月極』よりも儲かるんだ! と気付いたんです。それならば自分で月極駐車場を借り上げて運営しようと考えた」


 自主運営に必要なのは、地面に設置するロックシステム「フラップ板」(1台あたり約20万円)と精算機械(約100万円)だけ。


「初期費用は敷金などを含めても6台分で約300万円程度で、都心のワンルームマンションに投資するよりも割安です」


 本当に儲かるのだろうか。


「私がやった料金設定では、コインパーキングが3割程度の稼働率でも、月極の2倍の売り上げが見込めるような設計にしました」


 月極のスペースを3万円で借り、30分200円、夜間60分100円の料金にしたケースでは、30%の稼働率で月に6万4800円の売り上げになる。月極と違って1か月まるまる“空室”というリスクもない。

「駐車場需要」「月極よりコインパーキング」という2つの盲点に気付いたのが“勝因”だったようだ。



◆家が買えた


 上原さんが2006年から借りている千葉県の商業地にある100坪・12台分の駐車場の年間売り上げは780万円(月平均65万円)で、駐車場に設置する自動販売機のマージンがそれとは別に年12万円入る。


 支出は土地の賃料が年360万円(月30万円)、トラブル対応を委託する管理会社への保守管理費が年43万2000円、電気代が年6万円かかるが、利益は年382万8000円に達する。


 彼女はもう1か所で8台分のパーキングを運営しており、合計の売上額は年に1200万円に上り、利益は約760万円にもなる。


「防犯だけ外注すれば、基本は24時間ほったらかしで週に1回集金するだけです。


 こだわったのは、“土地の選定”でした。絶対必要な条件は、“車に乗って人が集まってくる場所”です。商業地はもちろん、敷地内に駐車スペースの少ない学校や病院、車の訪問が多いグラウンドの近くが狙い目です」


 投資は人生を変えたという。始めた頃はちょうど夫が起業した時期だった。


「夫がサラリーマンを辞めて無収入になり呆然とした。でもコインパーキングを始めて、家が買えました」

 この投資法は地価の変動などで手を引きたい時の「出口戦略」も立てやすい。


「アパートや月極駐車場のように利用者の契約を解除する必要もなく、土地の賃貸契約を解約するだけで撤退できる」


 素人ならではの発想と執念が生んだ異色の投資法。儲けの“タネ”は意外と身近にあるのだ。



※週刊ポスト2015年11月20日号